ホストクラブ体験記

2014年、歌舞伎町で桐生レイラを知らない人はいないだろうというくらい有名なホストだった。
B店の代表でNo.1で、モデルもやっていた。一般にも知名度がある。
歌舞伎町という街でそのネームバリューは今も色あせない。

渚光は好みが分かれるけど、桐生レイラはマイルドで万人受けするタイプ。

B店は朝ホス、二部営業（日の出から昼頃まで）の店。
私は朝6時頃に入店した。
階段を降りて地下一階に広がる店内はすでに酔っ払った女の子達で混んでいた。二部営業の店は一部（19時〜25時）に比べると数が少なく、他の二部営業の店に比べてB店は格段にレベルが高くトップクラスの人気があった。

男本（ホスト達の宣材写真のアルバム）から写真指名を選ぶ。私は桐生レイラと、ユキトという無名ホストを選んだ。

10分ごとにホストが入れ替わるシステムで2時間5000円。

桐生レイラが登場したとたんに、私はのめり込む。レイラさんの笑顔は人懐こい仔犬のようだった。レイラさんは明るいお兄さんキャラなのに、笑顔がかわいい。女心を一瞬にして動かす甘い笑顔。私のテンションは一気に上がる。レイラさんともっと話したいというところで次のホストに入れ替わる。

写真指名したユキトは写真で見るよりも、実物がかっこいい。有名ホストに負けず劣らずの見た目なのに売れていない。「写真よりも実物がかっこいい。顔もスタイルも良いね。」と褒めたら、嬉しそうに笑ってくれる。はしゃぐ私に、おれを指名して欲しいと言う。即決してもいいと思うほどユキトのルックスレベルは高かった。私は正直に「レイラさんに会いに来たから迷ってしまう。」と言った。

その後も色々なホストが着いてくれたけど、超人気店だけあってどのホストもそれなりに楽しい。後半に着いたホストに、気に入ったホストは見つかった？と聞かれて、私は「レイラさんとユキトが気に入ったけど、迷っていて決められない」と言った。
この発言は内勤に伝わり、レイラとユキトをもう一度着けるので選んでくださいと言われる。
ユキトの顔とスタイルはやはり私の好みだった。けれど、私は桐生レイラの仔犬のような愛くるしい笑顔にすっかり心を掴まれてしまった。もともとの目的は有名ホストに会ってみたかったのだと思い直し、桐生レイラを指名して飲み直すことにした。

私は飲み直しにかかるお金（20000円〜）を持っていなかった。内勤にお金をおろしてくると伝え、初回料金の5000円を支払って、店を出た。
コンビニに走った時のスキップするような気持ち、この日の中でこの時間が一番高まっていたと思う。桐生レイラを指名したらどれほど楽しいのだろうと想像して、足取りも心もスキップする。私は期待で胸を踊らせながらコンビニで50000円をおろした。

この頃の私は、何か始まる前のワクワクした感じ、胸が高まってドキドキする感じが好きだった。そんな刺激を求めてホストクラブへ向かったのだと思う。

さて、店に着き、改めて席に座る。指名ありがとうと笑顔で現れたレイラさんは、尻尾を振って駆け寄る仔犬のようだ。そのくしゃくしゃな笑顔はケーキよりも甘く生クリームよりもとろける。
この日のレイラさんの服装は細身のパンツに巻きスカートのようなカジュアルなコーディネート。私はホストスーツよりもラフな方が好きだし、安心する。
レイラさんに50000円をおろしてきたことを伝える。レイラさんは4000円のレッドブルウォッカ等をオーダーする。私はお酒が弱いからカクテルを薄めにして欲しいとお願いした。
レイラさんのヘルプに着いてくれたのはユナだった。ユナは写真写りが悪くホームページでも男本でも目にとまらなかったけど、一目見た瞬間に言葉を失うほど美しい容姿だった。
ユナの存在を知っていたら、レイラさんで飲み直ししなかったかもしれない。
少女漫画に出てくる主人公の男の子を形にしたらユナになる。手足が長く全体のバランスが良く、品のある整った顔にサラサラの髪、ユナは美しいという言葉がぴったり。
全員まわり終える前に飲み直しを決めてしまったことを後悔してしまう。ホストクラブは基本的に永久指名で、途中で変えることはできません。その店に通いたい場合は指名は慎重に選ぶべきなのです。

レイラさんの接客はというと、指名5分後には背中に手をまわしてきて肩を抱き寄せる。
私は酔っていなかったので、これが有名ホストの接客なのかと、冷静に観察していた。
レイラさんはハーフだと言っていた。そのためややカタコトの日本語を喋ります。普通の会話はできるけど、都合が悪くなったら日本語わからないと言って逃げそうだなと想像してしまった。
レイラさんを見ていてカタコトの日本語は時に母性本能をくすぐるのではないかと思った。
レイラさんとは会話のキャッチボールはあまりしなかった。私はレイラさんの自分語りを聞いてばかりいた。なにかもっともらしいことを言っているかのようで、自慢話のような内容だった。レイラさんの話を聞いて「へぇー、すごいですね」と私が返す。
スキップするようにコンビニに走った時の気持ちは落ち着いていた。
すごいねと頷く私の腰に手をまわすいちゃいちゃ接客。レイラさんの接客は、密着度が高い。腰に手を回したり、肩を抱き寄せて、胸を揉んでくる。これを一般男性がやったらセクハラ事案だなと思いながら冷静に有名ホストの接客はこういうものなのかと考えていた。
ハーフなので外国人の挨拶的な意味もあったのかもしれない。
スターホストといちゃいちゃしたいならハマるのだろうか。

指名で2時間くらいいて会計は49000円。

私は49000円を支払い、レイラさんに手をひかれて外まで歩く。指を絡めて手を繋ぎ階段を上がる。店の入り口を出て、レイラさんは太陽が眩しいと笑う。手を振って見送ってくれる。
歌舞伎町の日差しの下を歩きながら、私は何をやっているんだろうと思った。ホストクラブを出て外が明るいというのははまりにくい気がした。太陽の光に照らされて、ホストクラブででれでれした自分を恥ずかしいと冷静に思う。

B店の初回が楽しくて50000円をおろして飲み直しした私の行動は、衝動買いに似ている。多くの女性は服やバッグを衝動買いした経験が一度はあるだろうか。
私には桐生レイラもB店もそれなりに楽しかったのだと思う。
けれど、私はその後B店に行くことはなかった。

ユキトは売れることなく引退していったようだ。あれだけ見た目が良かったのになぜだろう。